2025-01-04 11:29
本書が描く古代の人間社会の姿は実に複雑多様で、善と悪という一言では言い表せない深みを持っている。
詳しくは本書を読んでほしいが、個人的に印象に残ったことは以下。
1.人間はトップダウン型の組織を「使わなくても」10万人規模の都市を作れる
古くはダンバー数と言われ、人間が為政者なしで自然に作れる集団のサイズは150人と言われてきた。
しかしウクライナで発見されたメガシティと呼ばれる遺跡では、10万人規模の都市が王や統治者をもたない、トップダウン型ではない形で構成されたことがわかっている。
2.西洋によるアメリカ支配が進んだ時代、ネイティブ・アメリカンに誘拐された西洋の子どもは西洋社会に戻りたがらず、西洋に誘拐されたネイティブ・アメリカンの子どもはネイティブ・アメリカン社会に戻りたがったという統計データがある。
歴史は常に西洋中心に語られがちで、ヨーロッパによるアメリカの先住民の植民地化も、文明を伝えたから良かった部分もあったのだと正当化されがちだが、先住民社会にも実は高度な政治体系を持った上で、ヨーロッパ社会を観察した上で拒否すべき部分を拒否していた姿が浮かび上がる。