2025-01-23 11:05
アンドレ・ブルトンの「ナジャ」④
「そこにいるのは誰か?。ナジャ、
君なのか?。彼岸が、彼岸の全てが
この生のなかにあるというのは本当
なのか?。私には君の言うことが聞
こえない。そこにいるのは誰か?。
これは私自身なのか?」ブルトンの
心の叫びだ。
数年後、私はパリへ行った。二人が
会った場所を探し歩き回り、ブルト
ンが眠るバティニョール墓地へ行き、
真紅の薔薇を墓の上に置いた。
墓には五芒星の星の形をした不思議
な石が上についていた。墓碑銘は、
「私は時の黄金を探す」と書かれて
いた。
ベンチがあり1時間ほどを過ごし、
寄り添うように座った。胸が一杯で
この場から離れることができなか
った。
ナジャという物語は「私とは誰か?」
を問うものだったのかもしれない。
ブルトンは、愛について極めて誠実
な人だったのだと思う。そして、
彼ほど愛について語り続けたひとを
私は知らない。
数年前、フランスで「ナジャ展」が
開催されたと聞いて、彼女の微笑む
姿を見た気がした。