2025-01-27 00:48
何冊か新書を書いている御大•廣松渉だけど、さすがにマルクス本は力が漲っているなあ。
“読者は、マルクス・エンゲルスが歴史観において自然と人間との相互制約、人間と自然との統一性に「生産」の場に即して留目するさい、その「自然」なるものが、エコロジカル(生態学的)であることを先刻来予期しておられることでしょう。実際そうなのです。━「生物とその環境との関係の学」と定義される生態学(エコロギー)
なる言葉がヘッケルによってつくられたのはマルクスが『資本論』を出した頃のことでして、それはマルクス・エンゲルスの歴史観が確立して以後のことです。したがって、固有の史観を確立した当時のマルクスはエコロギーという言葉など知るべくもありませんでした。そもそも生物学者ヘッケルは人間史に即して生態学的発想を押し出したわけでもありません。マルクス•エンゲルスが歴史観の視野に入れていた自然がエコロジカルであり、彼らの歴史観そのものが生態学的だということ、これは第三者的に見ての話です。だが、第三者的には確かにそう言えます。”廣松渉『今こそマルクスを読み返す』講談社現代新書(p60-61)