2025-01-27 14:13
いわゆる〈疎外論〉段階の著作として位置付けられる初期マルクスの『経哲草稿』だけれど、かの「四つの疎外」を丹念に読んでいくとすごく面白い。3つ目の「〈類的本質=存在Gattungswesen〉からの疎外」というのだけ、やや判然としなかったのだが、ここを読んでよく分かった。マルクスは、動物とは区別される人間の条件、その本質(=wesen)を、自己充足的consummatoryにモノを造るということに置いている(モノづくりはそれ自体として愉しい!)。けれども労働力を商品として資本に従事されるがゆえに、生産活動は手段instrumentと化する(死せる労働!)。マルクス主義、といえばなにか血生臭い階級闘争、革命ばかりを想起してしまうけど、初期マルクスの疎外=人間観は、裏を返せばとても明るい。ウィリアム•モリスが、なぜデザイナー兼社会主義者なのか、そのつながりがみえてもきた。人類学者ティム•インゴルドが、なぜ「つくること making 」から人間=存在を考えるのか、もみえてきた。マルクスのまわりに、革命とは異なる、〈制作〉の存在論がすでに用意されていたんだ。