2025-02-02 09:32
「鬼の姐さん、豆を撒かれても動じず」
「ふん、豆ごときでこのあたしが逃げると思ったかい? 笑わせるじゃないか。」
姐さんは艶やかに長煙管をふかし、薄紅の唇から煙を吐いた。
「年が変わろうが、春が来ようが、あたしはここに居座るさ。鬼は外? いいや、鬼はここだよ。」
艶やかな振袖に灯りが映え、角の影が畳に伸びる。
豆を撒く手を止めた町衆を見渡し、姐さんは妖しく笑った。
「ま、福が欲しけりゃ、鬼ともうまく付き合うこった。」
——江戸の節分、夜の長屋に響く姐さんの声。
鬼もまた、人の世と共に生きるのさ。
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