エマ 雪景色を見るのは人生で初めてだった。 エマは雪がほとんど降らない温暖な静岡で育ったので、厳冬期には氷点下10度以下になるミズーリーの冬の寒さは辛かったが、それでも雪だるまが作れるほどの雪景色には感動した。 だが雪の美しさに魅了される反面、心を開くことができる友だちが一人もいなくて、その美しさが一層、エマの孤独感を募らせた。 エマは小学校３年の時からサッカーを始めた。 サッカー名門校が主宰する小学生サッカー部に所属して、厳しいトレーニングに励んだ。 もちろん中学でもサッカーを続けた。 中学2年の時には「なでしこジャパン」がワールドカップで優勝を果たし、日本では女子サッカー人気が最高潮に達していた。 エマも高校２年の時には全国大会にも出場した。 だからサッカーには大きな自信を持っていた。 高校生１年の時にアメリカに短期でサッカー留学する機会があった。 その際に現地大学生と試合をしたが、圧倒的なフィジカルとスピードにまったくついていくことが出来ず心が打ち砕かれた。 そこで技術と体力を磨く為に、本格的にアメリカの大学にサッカー留学したが、まったく試合にも出して貰えなかった。