「捨てられてしまうミシンのはじめとおわりの糸を学生のころから瓶に取ってあることをきっかけに、 その瓶の世界観を表現していく。短い糸をミシンワークをしながら布化していく。 ほんのちいさな糸たちも掬い集めては、造形物を作っていく。 捨てられる糸は「おわり」ではなく「はじまり」 えがくように。遊ぶように。踊るように。 暴れて、転んで、増殖していく。 おもいのままに。 わたしがわたしになるために。」 この言葉が示すように、諸橋さんは日常の中で捨てられることの多い糸たちを集め、 それらを再生する。 様々な過去を経て捨てられようとしている時間の産物として集められた糸は、 新たな形に変えることによって、過ぎ去った時間と向き合いながら 記憶を紡いでいるように思える。 ミシンを使って短い糸を布へと変えていく行為は、不要としたものや忘れたものの記憶の復元作業のようだ。 それは、消えゆくものや忘れられたものをもう一度形にし、再生させる過程。 糸のひとつひとつが過去の出来事や感情の断片を象徴し、そこから新たな物語が紡がれていく。 記憶異世界芸術祭