2025-03-15 18:16
.
2003年、豊田市美術館でみた「ヴォルフガング・ライプ:Wolfgang Laib」展はおどろきの連続だった
ドイツを代表する現代美術作家であるライプは、タンポポや松の花粉、米、牛乳、蜜蝋などを用いて作品を制作し、その過程や展示そのものが瞑想的なプロセスとなり、独創的
なかでも大理石の板を浅くけずり、そこに牛乳を満たし表面張力でわずかに盛り上がる様を観賞する作品《ミルクストーン》は圧巻だった
永続的で不変の大理石と流動する牛乳という対照的な素材の組み合わせによって、時間や生命、静寂、変化といった「無常観」を表現し、その東洋哲学的な発想にこころ揺さぶられた
「ヴォルフガング・ライプ:花粉から宇宙まで」(森美術館/2022年)など都内でも展示されたため、記憶に残っている人も多いはず
ライプのミニマルな作品群は、鑑賞者に哲学的な思索をうながし、円環的な時間感覚を通じて深淵かつ神秘的な体験を共有させる
今回、かつての展示空間にふたたび足を踏み入れ、あらためてその素晴らしさを噛みしめた