2025-03-18 09:35
⑤ と言ったものの、結局彼女のペースで会話は流れレツィーナもほどなく空いてしまった。
「もうこの家にはスブロフカしかないよ。桜餅の風味があるポーランドのウォッカ。40度。」
「いいじゃない、この空気にぴったりで。」
そのスブロフカが半分ぐらい空いたあたりで、僕はだんだんと呂律が回らなくなり、逆に視野は回り出して部屋が薄紅の世界に包み込まれているような錯覚に陥った。
僕はきっと「ふーん」を連発しながら、彼女の髪や唇に触れているのか本当はどうなのか判らないままに記憶が途絶えた。
寒さと小鳥の声で目が覚めた。
窓は開きっぱなしで、部屋の中にはたくさんの花びらが舞い込んでいた。
彼女の姿はどこにもなく、空の瓶が3本と、シンクの横に洗ったグラスが2脚並んでいた。その横には小さな紙切れにほっそりと字がしたためられていた。
居心地のいい夜をありがとう。
また来年会えたらいいね。
桜子↓