人は、「全て」と出会えないし、手に入れることもできない。 人も、物も、環境も、機会も。 何かを選べば、何かを失う。 欲望には、個人差があると思うが、私はおそらく、その熱量が低い。 幼い頃から、いろんなことを諦めて生きてきた。 別れは悲しいが、それも最終的には、受け入れてきた。 出会えなかったことや、失ったものたちが、自分の横を通り過ぎて、後ろへ遠ざかっていくのを、黙って見送ってきたように思う。 自分が描く絵画も、同じだと思っている。 私は、「全て」を描くことはできない。 自分にできることは限られている。 この世界に、たった一人しかいない、私という人間。 その中で、出会ってきたものたち。 そして、これから出会うものたち。 その中からしか、私の絵は生まれない。 最終的には、その私とも、別れる時がやってくる。 その時、私の生が通り過ぎていくのを、悲しみの中にありながらも、静かな諦めと、穏やかな心を持って、見送れるように、これからの絵画人生を歩いていきたいと思う。